清水 誉

読んだ瞬間、自分も同類になる恐怖
「世界の衝撃映像」や「戦慄の怪奇映像」などの番組は、毎年必ずテレビで流れる。 怖くて目をそらしたいのに、それでも映像を見てしまう。それは映像にある種麻薬のような興奮作用を覚えてしまった、人間の悲しい性なのだろうか。 この作品の主人公は正にその興奮にハマってしまった人間である。妻の苦言を受け流し、アン・ハッピーで酷い映像を探す場面は、暗い書斎で目を充血させながらパソコン画面を見る男性の後ろ姿が、私の脳裏に浮かんだ。 おぞましい映像で性的興奮に繋がるのは非常に気味が悪い描写であったが、それが同時に、生々しくリアルに感じる。(私は抜きませんよ) もっと酷いものを、もっと悲惨な現状の映像をと探し求めている内に、身近な知人の不幸をサイトで発見し、そしてその後に起きる身内の不幸。 まさかと思いつつ動画を探すと、妻子を襲った惨劇が挙げられている。衝撃映像を望む観衆の目に晒されている。自分と同類の観衆たちに。 人の不幸で抜いてた男に大きなしっぺ返しがきた。 流石に主人公はもう傍観者では居られない。大きな不幸を渦中に居て、誰かの視線を感じる立場になった。 人の不幸は蜜の味と昔から言われているが、それを味わいすぎた男の末路としてはお似合いかもしれない。 しかし、最後まで読んで気付いた。 最後に主人公が気付いた視線は、誰のものだ? 視線の主は、他人の不幸を覗き見て、その恐怖に満足した。 そう。それは、この作品にぐいぐいと引き付けられてしまった、読者の視線なのだ。
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丁寧なレビューをありがとうございます!! とても嬉しいです☺️ 『人の不幸は蜜の味』とは本当に昔から言われている言葉なので、人間特有の本能というか、現在ではさらに、その欲求が強まってると思い、そんなもん他人事じゃないんだよ、もっと想像力を持ちなさい、というメッセージからこの作品が生まれました。 ところで、兄ぃの「私は抜きませんよ」に笑ってしまいました。 本当にどうもありがとうございました!(*´∀`*)
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こちらこそありがとうございました。 とても怖くて面白かったです(´∀`) 上手い人はなに書いても上手いなぁと思いました。
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