紗綾

『七夕の願い~再び~』 今日は七月七日。 梅雨も後半に入り、毎日雨続き。 せっかくの七夕だというのに、こんな天気では天の川も見られないかもしれない。 「今年は七夕祭り、中止になってしまいましたね」 「そうだな。でももし祭りが開催されたとしても、こんな雨模様では花火は上がらなかっただろう。一緒に見たあの七夕祭りの花火が懐かしいな」 そう、あれは何年前になるだろう。 私たちは七夕祭りに出かけて、一緒に短冊を笹の葉に結んだのだった。 その後に見た打ち上げ花火が綺麗なのも覚えているけれど、それよりも……。 「そういえば短冊、今年は書かないんですか?」 「なんだやっぱり今年も願い事をいっぱいするつもりだったのか。強欲だな」 私が何枚も短冊を書いていたこと、やっぱりまだ覚えていたんだ。 「あの頃はちょっと欲張りでしたね、私。もうさすがに何枚もは書きませんけど、一枚くらいは書きたくないですか?」 「……しょうがないな。じゃあ、お互い相手に対する願い事を短冊に書くってことで、どうだ?」 そう言って、一枚の短冊を手渡された。 私が書きたいのちゃんと分かってくれてて、こうして用意してくれてるなんて。 「願い事、なんでもいいんですか?」 「ああ」 どうしよう……。 まさかお互いに願い事を書くことになるなんて、考えてなかった。 私が彼に望むことって、何だろう。 「どっちから先に見せるかだけど、どっちがいい?」 「すみませんが、私のは後にしてもらえませんか。そうじゃないとちょっと困るっていうか……」 変に思われてしまうだろうけど、仕方がない。 しかしどうして困るのかと聞かれても、それはそれで困るんだけど。 「そっか。じゃあ俺から先に見せるけど、覚悟はできてるか?言っておくが拒否権はないからな」 え、拒否権なしって。 それじゃ『願い』っていうより『命令』なんじゃないのかな。 なんだかちょっと不安になりそうけど、私が短冊を書いた時点で覚悟はとっくにできている。 「大丈夫です。バッチコイです!」 元気よく返事をした私の目の前に差し出された短冊。 そこに書かれていた願いは……。 『結婚してください』 私も、短冊を差し出す。 『あなたの願いを叶えさせてください』 雨が止み、雲の切れ間から天の川が光ったような気がした。 終
6件・5件
ひえええ(///▽///)こんな偶然、素敵だわ。ごちそうさま。
1件4件
にゃは!ありがとうまゆみん( *´艸) あなたもご存知のあのカップルです。 名前はわざと出してないけど(笑) しかしまさかのプロポーズでね。 筆談ですよ……マジかよ(爆)
1件

/1ページ

1件