水谷遥

序盤は特に必見
 魔物がいる世界。それを狩るハンターという連中がいる世界。  概要だけで見れば異世界物ですが、内容的にはヒューマンドラマです。魔物やハンターは、現状、舞台装置として使われていて、関節描写で詳細も描かれていませんが、個人的にはこの手法は好きです。  魔物という「何か」がいて、それを「なぜか」狩るハンター達の現況をキャラクター目線で追っていき、世界観をじっくりと浸透させ、彼等の立場や苦境にも同時焦点を当てています。  「読者に妄想させるコンテンツ」である小説という媒体にマッチしていてゾクゾクと背中を震わせます。  更に特筆すべきは序盤の兄弟達の幼少期。  魔物に妻を殺され、憎悪の化身となってしまった父は魔物退治に没頭してしまい、子供達は置き去りにされ、食うにも寝るにも困る生活を強いられてしまいます。  幼いながらに必死で生きる為の道を探し、弟を想う兄の愛情と逞しさが描かれており、更には親という存在の大切さ、逆にそんな親を奪っている「魔物」への敵愾心が形成されていく様が行動で示される事で、キャラクターへの共感や愛着につながっています。  また、こうした行動を取る「兄」だから、こんな性格になる、と想像ができ、後半の行動への根拠となっていました。  こうした「優しい」とか「強い」といった漠然とした概念は、言葉で説明されてもいまいち伝わりません。「行動」で示さなければ感心が向きません。(現実でも同じですね)。性格も同じで、行動にて浮彫にさせなければ、最終的な「会話」への説得力が生まれません。  安直な言葉に逃げず、しっかりと行動を見せるべきで、本作はお手本にできる程素晴らしい出来でした。  
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