水谷遥

主人公の想いが伝わります。
 高校生で、周囲にゲイを認識されている主人公。  ごく一部の親密な友人だけが知っているのではなく、学校の友人が全員知っている、所謂カミングアウトしている学生です。  要は「このカマやろうが」と、周囲に罵られるシーンが出てくるという分けです。それを庇う女性の友人が居たり、それを守るヤンキー男性も居たり、そのヤンキー男性と恋に落ちたりがメインストーチーなのですね。  だからこそのシーンが、至る所に散りばめられています。  この作品自体のテーマは「片想い」ですが、ジェンダーが加わる事で途端に景色が変わってきます。艶やかに色めきます。 同じ台詞、同じシーンを「もし主人公が女性ならば」で考えてみると、普通のモテない女子の日記ですが、ここに「抑圧」が絡む事で一気に読者の感情を掴まれます。 「苦難を持つキャラクター」が、最も人の感情を引き付けます。  本作主人公は、告白したいのに、ずっとできません。できない理由は、安易に想像する「普通」ではありません。「自分なんかが告白したら、相手に迷惑だろう」の意味合いも、男女とはまるで違う意味を持ちます。  最後に濡れ場になるのですが、彼は「最後」までしてくれません。相手側の優しさだったのですが、これがどれほど青年の心の傷になったのか、容易に理解でき、読んでいるこちらも辛くなりました。  その上で二人が現在に再会し、恋をリスタートする。  私はいつも思うのですが、「ストーリー」はオーソドックスでも全然構わないのです。オチが見えていようが、どこかで見た物語だろうが、何ら問題はありません。どれだけストーリーを弄っても、既に物語なんか出尽くしています。 「主人公の苦難」。  これをどれだけ書ききれたか? どのような角度から解釈しているのか? そこにどれだけのコストを作者は支払っているのか?  作家性が全てだと考えています。  この作家性は、王道こそ分かりやすく顕れ、ストレートにその心意気を伝えてきます。  本作の「高校生時代」は熱の入り方、描写、感情、捉え方、どれもが素晴らしく、ずっと目頭を熱くして読んでいました。  とても良く立った主人公でした。
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レビューありがとうございます😊 批評の掲示板だけでなく、こちらにも記載頂いて大変嬉しいです! 自分の作品の良いところ、悪いところ、足りないところ等がよく分かりました。 自分の話はオーソドックスであまり捻りがないのが悩みでしたが、それでも大丈夫なのだと背中を押して頂いた気持ちです。 丁寧なお言葉を頂き、ありがとうございました! また批評の掲示板の方にお伺いしますので、よろしくお願い致します😌✨
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