にね

昔話のテンプレートを逆手にとった秀作
風月さんの時代物は語りが心地よく、端的な表現で映像が鮮明に浮かぶようです。それだけ時代がかったものにご精通されているものとお見受けします。 さて、本作はタイトルから推察されるとおり、昔話の類型の一つであります異類婚姻譚を題材にしたお話です。先ほどご精通されている、と申し上げましたが、風月さんはこういうお話のテンプレートをよくご存じなのでしょう、それに則った王道の展開で物語は進みます。そして、王道を知っているからこそ、あえてそれを逆手にとったラストを書くことができるのです。そのラストを補強する布石もきちんと打たれています。まさにお手本のような作品。 ……とまあ、専門家みたいなことをつらつら並べたてましたが、私は専門家ではありませんし、このお話のラストについては、ぜひ読者の皆さんにその目で確認していただきたいので言及はいたしません。それから、この作品は展開が「整っている」「よくできている」だけでなく、ちゃんと人の悲しみや心の動きといったことに焦点を当て、ドラマがつくられていますので、安心してお読みいただける秀作です。このたびは読ませていただき、ありがとうございました!
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