有月 晃

なんだろう。現代のプロレタリア文学? いや、ちょっと違う……
吹っ切れた面白さ。 自他共に認める「エリート社畜」たる主人公が徒然と綴る独白を中心に、物語は展開していきます。 そこで語られる心情は、読み始めた当初こそ「いやいや、そんなわけが……」と冷静に突っ込めるのですが、手を変え品を変え繰り返される内に、奇妙な説得力と剽軽さをもって胸に浸透してきます。 「ひょっとして間違えているのは私達なのか……?」という疑問が一瞬でも脳裏を過ったのなら、貴方は著者の思惑にまんまと嵌まることができています。オメデトウゴザイマス。 物語全編に散りばめられたこの「捻りを効かせた諧謔」が、この短編の持ち味と言っても過言ではないでしょう。ここを楽しめるかどうかで、評価が分かれると思いました。 そして、物語自体を楽しめなかった読者でも、こういった表現を可能にした著者の筆力は認めないわけにはいかない。 暫時、普段自分が「常識」だと思い込んで疑わない事柄の脆さ、そこに潜む危うさに思いを馳せました。 面白かったです。
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ありがとうございます。 そうですね、現代風のプロレタリア文学はたぶん、現実の悲惨さをポップな包装紙に包んで手渡されるような、恐ろしさを持つのかなと思いました。書いた自分が言うのもおかしいのですが、本当は怖い話なのかもしれません。
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