鵜木曽 銘

感想の続きです
さて、では気になった点を申し上げます。まず、十貫寺家の闇についてです。家系図を見るとどうやら近親相姦を繰り返している家系の様だという事が判明しますが、「なぜ」そのようなことをしているのか、という事についてあまり触れられていないのは気になりました。「家」というものをある種の「悪」として描く仕方は往々にあるのですが、それでも「家」の根底には何かしらの論理があるものです。例えば政治や、血筋へのこだわりといったある種のエゴイズムなど。この作品では「近親相姦を繰り返してきた家系だ」という表面のものしか見えてこなくて、深みがあまり感じられませんでした(個人の感想ですし、そこは問題ではないと思われる方もいらっしゃるはずなので、話半分程度に見てください)。この家の血筋に関するそうした背景が克明に描かれていたとしたら、この悲劇的な状況はもっと生々しく現前したのではないか、と思った次第でした。 ともあれ、話の構造、展開の仕方、文章のどれをとっても非常に上手な小説だと思いました。面白い物語を、ありがとうございました。
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とても丁寧なレビューに感動しております。 ミステリは好きなのですが、実際に書くとなると四苦八苦したので「面白い」と言っていただけ嬉しいです。 本当はもっと大正時代らしい描写を増やしたかったのですが、未熟で叶わず……そんな中でも大正の雰囲気を感じられたなら安心しました。 また「妹」をめぐる二重構造にも触れていただきありがとうございます。 そして、十貫寺家の闇について。 この闇の描写はたしかにあっさりし過ぎた感が否めませんでした。理由としては考えれば考えるほどおどろおどろしくなる・ページ数が大幅に増えてしまうかもという不安があり、削ったのですが程よく入れておくべきでしたね。作中でも「血筋にこだわり

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