Uminogi

星羅が可愛い。
天才であるが故に妬まれて。自尊心なんてないくせに、どこか斜に構えている。 そんな子が、僕の通っていた学校にもいました。 僕は決してその子の理解者になることが出来なかったけれど、それでも憧れてしまう気持ちは確かにあったのです。 そしてその憧れが、嫉妬に転じることも、痛いほどによくわかってしまう。だからこそ、一概に外野を悪だと決めつけることができなかった。 小学生特有の無邪気な悪意と。それに晒される一人の少女の現実に、とてもやるせない気持ちを抱かされたのです。すばら! そんな夏輝を救ったのが、同じ苦しみを共有する異国の人、星羅。 二人は惹かれあい、とうとう駆け落ちを選択するに至る。とても甘酸っぱい間柄に、幾度もときめいてしまいました。 文章自体は、最新のものではないということで見劣りする部分もありましたが、それらを補って然るべき、ストーリーのパンチがありました。 特に、月の下りは本当に最高。きゅんきゅんとしてしまいました。 地の文も、自分の中でのお気に入りがいくつかあって、その一つが、 「何か言ってくれるのか、彼女に期待した私が嫌いだ」です。 星羅に対する期待と、自身に向かう被虐とが入り混じった、とても美しいワードセンスだと思いました。   設定も非常に面白かったです。まさか地方が他国に占領されるという、『イフの世界』を見せつけられるとわ。 百合というテーマに掛け算されたその世界観は、二人のシチュエーションをよりいっそう面白くし、役割を十全と果たすことが出来ていました。 戦前生まれのおばあちゃんが日本語を知っているお陰で、月の真意を知る展開も、設定をうまく生かしており思わず舌を巻きました。 断言します。他の百合作品と今作は一味違う。「百合」単体で捉えた場合は正直、少し味気なさが残るのに。さまざまなテーマや、投げかけられる問の一々が心に刺さり、読み進める手を止めることができませんでした。 小学生の百合ってなんでこんなに愛しいんだ! 長々と語りましたが、自分がなにを一番に伝えたいのかというと、「星羅」が可愛い!
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コメントありがとうございます! 星羅ちゃんを気に入って貰えて嬉しいです(^^) 設定について色々考えて考察して頂いて本当に嬉しいです!初めて書く百合小説でしたが、2人がハッピーエンドになることを祈りながら書かせて頂きました…! 本当にありがとうございます!

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