布原夏芽

言葉は表裏一体
 コミカルな世界観と、悪意のない悪口という繊細な主題の取り合わせが絶妙で、読むごとに引き込まれました。  悪口って文字に書くと単純だけど難しいですよね。事実を口にしただけでも悪口になりうるし、逆に汚い言葉のようでも、怜を助けにいくジュンタにメンチがかけたような発破をかけるものもあります。作中に散りばめられたエピソード一つ一つに考えさせられました。  「何言ってるのかわからない」もジュンタにはつらい言葉だけど、メイにすれば「トミーじゃん」。受け手に心当たりがあるかどうかなのかもしれませんね。そのことは、顔の傷に対する「ちょっと怖い」という言葉を「フランケンシュタインみたい」まで自分で増幅させた怜の闇にも窺えます。  (おそらく)「チビ」に規制音がかかり、「背が小さい」は発言できた場面も、後者は汚さのない単なる事実だけど、低身長を気にしている人は傷つくかもしれない。表面的な言葉狩りをしても意味がないと気付かされます。  その点、佳境で好きな相手のことを「男っぽい」と言っていいのか、悩みながら愛の言葉を紡ぐジュンタには成長を感じました。  中盤、突然メイと話が噛み合わなくなる場面は、作り物の感触にひやっとしました。優しい世界から出て、いつかは現実と向き合わなければならない。その象徴がばごだめなのかもしれませんね。  悪口を自分で増幅させたことを忘れた怜が、別世界で悪口解放同盟のボスとなり“真実味のある汚い言葉”を求めたのも、自分の鬱屈の正体がそこにあると予感していたから?そう考えるのは深読みしすぎでしょうか。  序盤に怜は「金髪男が正義の味方かどうかはプレイしてみないとわからない」と言ったけど、これは言葉自体にも当てはまると思います。言葉に絶対的な善悪などなく、表裏一体。だから丁寧な文字で手紙を書いたり、ありがとうに力を込めてみたり。一方で、飾らずとも伝わる愛の言葉もありました。勇者になれなくても、等身大の言葉が目の前の一人を救う。それが、時に傷つけながらも言葉を交わし合う意味なのかなと感じました。  「ぽんこつ」でさえ裏返せば愛らしさに繋がりますね。ジェイはそのぽんこつぶりが周囲を楽しませ、メタ的に言えばシリアスな主題の本作品を明るく変えた立役者に見えました。
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すごく的確なご感想、恐れ入ります。 まず、ホントにこんな支離滅裂なお話に最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。 自分の中で67000字というのは、とてつもない長さの物語なので作品の全体像をきちんと把握して駆けているのか、正直自身がないまま書かせていただいていました。 怜の心の闇・・・は、読者の方の想像にある程度お任せしてしまおうというずるい魂胆で書いていた部分があります(笑) ただ、「言われてもいない悪口まで勝手に増幅して想像してしまう」というのは共感できる人が多いのではないでしょうか。そして、そうしているうちに他人からポジティブな事を言われても「どうせ奇麗事でしょ?」と
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返信ありがとうございます! リクタさんの大作、随所にメッセージが込められているように思えて、意味を考えながら読みました。レビューが長くなってしまってすみません。(「えっ、きもっ」と思われないといいなと祈りながら送信しました笑) 今回のコメントも頷きながら読ませていただきました。似顔絵事件は実体験がもとになっていたんですね。リアリティあふれるシーンだったので納得です。 「変に空気読んで無難な事ばかり言ってても人間関係は深まらない」というのは、ばごだめの世界を経て成長したジュンタの姿から伝わってきました。これだけ長い作品なのにメッセージをぶれずに入れ込めていてすごいです(^^) 最後になりましたが
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