鷹取 はるな

向かい合う二つの顔か、それともただ置かれた壺か。
私は本作品を拝読して真っ先に、「向かい合う二つの顔」にも「一つの壺」にも見える心理学の図を思い浮かべました(調べたら『ルビンの壺』と言うそうです) 図の二人の人間の顔は真っすぐと見つめ合っていますが、本作品は違います。 察するに、本作品の登場人物である二人、景斗と優利とは共に前途を期待されている若手俳優です。 周囲の人々も認める仲の良さながら、彼らの視線はほんの少しも交わっていません。 実際のではありません。 心のです。 ――まるっきりすれ違ってしまっています。 それを強くハッキリと感じさせられたのは、景斗視点での語りの間に挟み込まれた優利視点の箇所です。 ここまで異なっているとは・・・・・・と、すっかり景斗の目線になっていた私は愕然としてしまいました。 その決定的なまでの違いが切なくて、とても哀しかったです。 景斗と優利とがそれぞれ心でお互いに観ているのは、全く別の図です。 人の顔と壺くらいかけ離れています。 隔たり、つまり距離があるのです。 そう――、本作品のタイトルにあるように景斗は最初から最後までただひたすらに、優利との『距離』について思い悩んでいます。 二人の目線が、想いがどの様に異なってしまっているのかは、是非ともお読みになって確かめてみてください。 私は未読なのですが、本作品と対になっている別作品の「踏み込む、距離」があるそうです。 「彼女」目線とのことです。 併せて読んでみると人の顔でも壺でもなく、又別の図が浮かび上がって見えてくるのかも知れません。
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鷹取はるなさん、 丁寧な、そして素敵に上品で甘いご感想、ありがとうございます。 すれ違いからくるもどかしさ、切なさというのをここまで深く解釈して表現してくださる表現と感性の豊かさ、脱帽します。 狙っていた感情の刺激も受け取っていただいて、作者としては嬉しいばかり。 そして対になってる「踏み込む、距離」ですが、こちらは「彼女」と景斗が見ている全く違う図を描いています。 実は本作も、この「踏み込む、距離」ありきで生まれた短編なので、もし贅沢言わせてもらえるなら合わせて読んでもらいたいな……なんて思ってる次第です。 ですが、糖分補給はこれで十分すぎるくらいなので、もし気が向けば、くらいで(^
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わざわざお返事頂き、ありがとうございます。 思ったまま、感じたままに書かさせて頂きました。 やはり、対の作品があるのならば是非とも読まさせて頂きたいです。 私事が落ち着きましたら、お邪魔させて頂きます。 こちらこそ素晴らしい作品の感想を書かせて頂き、本当にありがとうございました<(_ _)>
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