ノリアキラ

【 闇恋指南 】4/4  後悔とは、えてして先にたたぬもの。世の中、分別が事前についたなら、後悔には至らぬ仕組みになっている。  最初は慰めで、しかし、舌に舌が触れた後には吸い絡めてしまっている。  誰のどこに何をやらかしたと正気に戻ったのは、うっとりした心地のまま瞼をあげ、色気とはまったく一線を画した陸揚げされたばかりの魚ように瞠かれたフォンの目と視線をかち合って、ようやく、だ。  例の銀環に触れる保険すら忘れていた愚かを悔いても、当たり前の事であるが、時間は巻き戻しようがない。  身を少し離すが、肌の香りが嗅げる位置。加えて体にはもう火が灯ってしまった。それでもこのままと劣情が理性を打ち崩しにかかってくるのをにじり伏せて、苦笑いで身を起こそうとする。 「ビックリした……すっげ、ペネルティ」  しかし、フォンが左手の甲を自身の唇に移動させ、呟く言葉が聞こえて、身を強張らせた。  思わず傷ついた顔になりかけ、 「『嫌がる事』、か」  両手首を掴み直すと、再び唇を塞ぐ。 彼の下でフォンの腰のアーチが引きあがった。  その腰を彼は左掌でサポートする。彼が強く押し当てた部分の感触で、袴越しにも意志はしっかり伝わっているはずだ。  ……唇を離す。 速い息が互いに漏れる。寄せた体が驚くほど熱くなっているが、もはや自分の熱なのか、フォンのものなのか。  フォンの喉が動いた。しかし聞く前に彼は動いている。殊更何でもない事のようにその耳に囁く。 「そう、解決せぬ事で気を病むのは良くない。単純な快楽が安定させてくれる事もある。一度、気をやって、スッキリしなさい」  額に額を寄せその瞳を覗く。黒い目が彼を睨み上げる。 しかし、右掌を袴の裾から入れてその足をぞろりと尻まで撫で上げると、フォンは身を反り奥歯を噛む。  これはまた、随分と、感度の良いような。 「何。男同士でする行為など、スポーツと変わらん」  どうにも説き伏せたくなって、そのような訳があるかと噛みつかれても仕様がない事が、ほろりと口から洩れた。 「……え? そういうもん?」  だが、逆に心許なげに尋ね返して来るから口が引き歪む。 なんと。通るのか、この論理。  信じるのか、この男。  だが、非道と思っても抵抗できない。何度も無心に頷いて、彼は再びフォンの口を塞いでいた。 (終!)
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https://estar.jp/novels/24108425  ノリノリで書きすぎて、リンク落ちました(笑) あー、コレもオチまで書きてぇなぁ(笑)  ストイックだった本編の欲求不満をいまここに昇華中……くくく、楽しい……(笑)
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