少々難解ながらも読みやすく深い。
本作品は、エピソードごとに分解され効果的に配置されていますので、通して読む読み方と、時系列になおして読む読み方ができます。ですから、さほど判りづらくはないでしょう。ですが、それだけではもったいないので、僭越ながら時系列と私が気づいた暗喩を書き出してみます。間違っていましたら、ごめんなさい。 目次を見るとわかりやすいですね。 2021年11月28日が物語り現在で、29年前の1992年11月28日の記憶と15年前の2006年の11月28日の記憶にリンクされています。 ですから、現在の主人公が、1992年の自分と、その15年後の自分を思い出しているのです。 時系列であらすじを組み立てますと、 裕福な家庭で、お嬢様として育った主人公は、1992年父親が不況によって会社を失くし、小さな家に引っ越すことになる。 クラスメイトだった、あっちゃんからクリスマスプレゼントとして貰ったぬいぐるみジョジーに、転校先でのイジメなど辛い心の内を打ち明けるうち、会話できるようになる。 父親は亡くなり、母子で暮らしている25歳のとき、10歳まで通っていた学校の同窓会の案内が届く。 同窓会に出掛けた主人公は、会場ではなく一般の住宅に行き当たる。そこでジョジーをプレゼントしてくれた敦と再会し、本当の同窓会会場へと向かう。 時系列以外にも分解されている描写と説明がちりばめられています。 主人公が同窓会へ向かっていた頃、母親は娘の部屋で古びたぬいぐるみを見つけ捨てようとするが、中綿の中から幼い頃の満たされなかった思いが綴られた娘のメモを見つけ、ぬいぐるみを洗濯し、元に戻してあげようとする。 そしてタイトルですね。『ジョジーはもうしゃべらない』とは、25歳にもなって、ぬいぐるみと会話しなければならなかった主人公の心が変化したことを表しているのでしょう。 現在の主人公には夫と娘が居り、ぬいぐるみのジョジーとも一緒に暮らしているのです。 蛇足ですが、主人公の娘の姿は、主人公が子供の頃から夢見ていた、幸福な自分の姿なのかもしれませんね。 素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました。
1件・2件
宮崎さん、丁寧な解説と感想をありがとうございますm(_ _)m 最初は、日付も入れずに書いていたのですが、いやはやわかりにくい。よし、ではナオの日記の一部にしてしまおう、と日付を付け加えました。 孤独で両親も頼れなくて、苦しみをぬいぐるみに言わなければならない負けず嫌いな女の子が書けて満足です。
1件1件
日付はあったほうがいいですね。私のようなうっかりさんもいますしノ(´д`*) 主人公ナオと母親の再生の物語となって、重厚になっていましたね。 先日SNSで見掛けた、ジャンプのネームテクニックで、『説明しなくても読者に伝わること』が、『女の子がぬいぐるみに話しかける』にバッチリ当て嵌まっていて驚きました。 よくあるシチュエーションだからこそ、誰もが『ジョジーはもうしゃべらない』のタイトルから悲惨な展開を想像して、よい方向へと裏切られる。素晴らしい仕掛けでした。
1件

/1ページ

1件