私の場所は遠く、異国にひとり
 作中でも語られるように、グリニッジ標準時と日本の時差は9時間。  ひと昔前と違って、今はSNSでもメールでも一瞬でつながる。けれども、つながった相手は9時間先の未来を生きているようで、人はそこに距離を感じずにはいられないだろう。  景観を維持するため、建物の造りは昔のままで、白い壁の建物にチムニーポットの乗った屋根という街並み、そういった風景ばかりを見れば、たしかに「世界が止まっている」かのように感じるかもしれない。心象としては、さらに距離が遠のいていくように思えるだろう。  本来なら主人公・舞子が属している場所・居たい場所は日本の、彼のいる環境と思われるのだけれど、今は倫敦にひとり切り離された状態だ。 「私は遊びに来てるのではない」  舞子の述懐は暗に、この場所にいるのは「学びに来ている」自分だけであり、「遊んだり恋したり人生を楽しんだり」する自分は日本でも英国でもない、どこでもない場所を彷徨っているのかも知れない。  舞子は懸命の努力をしている。しかし目的を達成するために自分を含んだそれ以外の(余計な)ものを削ぎ落としていけばいくほど、彼女の居場所は無くなっていく。現在は学校と、ノートPCの置かれた机の前だけという状況だ。  彼女は空間的にも時間的にも、そして人との繋がりも孤独である。つまり居場所がないのだ。  そこからどうやって自分のあるべき場所を見つけ、そこに至るまでケイティがどのような役割を果たすかは、本文を読んでいただきたい。また、ももたろう さんが詳しいレビューを書かれていらっしゃって、そちらを読んでいただいた方がいいと思うので、ストーリーについてはここでは述べない。  私が作品から感じたのは、人はやはり独りで生きられない、ということであり、個人の強さや才能は必ず周りの支えがあって発揮される、ということだった。  未読の方はぜひ、読んでいただきたい。  味志ユウジロウさんではないけれど、作者ノーコメントの部分に想像力を掻き立てるものが見え隠れしているように思う。続編もあるのだろうか。主人公の名前からして、ちょいと気になるところではある。
1件・2件
よいちさん、 嬉しい感想ありがとうございます。読んでるとウルウルしてきます🥺 心情と実際の風景とのシンクロ具合を芸術的に解釈くださり、私も「なるほど!」と演出や描写のヒントをいただきました。 自分がいる場所ですか。それも大事な作品の要素だ、確かに。 続編…! はて、どうなるやら、ですが書くとしたら帰国後の、翌年のクリスマス時期かなぁ? また創作イベントでご一緒できて光栄です。カレンダーの御作もお待ちしてます。 小波
1件1件
喜んでいただいて、光栄です。 レビュー書いてよかった😌 私は12/22の担当なので、まだまだ先です。 (もう書き終わっているので、手持ちのブタさんです🐷ww) よろしくお願いいたします。
1件

/1ページ

1件