ⅠはATPを全力で楽しむための基礎編
 すごい作品を読んでいる。そう気付いたのは、序盤、走るトラックにしがみついて耐えるグウィードのシーンを読んだ時でした。  トラックのどこって、下なんですよ……。少しでも力を抜けば大根おろしになってしまう緊迫感! だけどグウィードはなんとか体を引き上げ、安全を確保してから思うのです。新鮮な空気がうまい、と。  ATPとはどんな話なのか。まだそれが手探りの中、とにかく予感したのは、「私はこの作品を大好きになる」ということでした。  高い描写力。キャラメイクのお洒落さ。そして「トラックの下」という自分自身も知らなかったツボを押してくる!  ドキドキしつつ、息を飲んで見守った衝撃の第1話。ATPの雰囲気というか、躍動感を感じ取ったのは、第2話へ向かう時でした。  物語は街から飛び出し、大海原へ舞台を移すのです。エアロンも沈んだままなんかじゃありません。この小説は動く! 動くぞ! と、すごく嬉しくなりました。  また、第2話を読むと皆船長が好きになると思うのですが、安心してください超重要人物です。Ⅲまで読みましょうね! 船長、すっごいから……。  第3話からは神官セメイルが登場、エアロン達と対立します。この時は敵ですし、読者はむしろ味方の好好のチャーミングさにキュンと来るかもしれないですが……Ⅱを読みましょうね! セメイル、すっごいから……。  とにかくここで言いたいのは、ⅠはATPという壮大な物語の導入編であるということ。Ⅰだけ読んで終わってしまうのは、豪華フルコース料理のほんの前菜だけ食べて帰るのに等しいということ!  しかも、フルコースのまとまりと言いますか、一体感が物凄いのです。  私は最後までムシャムシャして……つまり、シリーズ完結まで拝読した後、レビューを書かせて頂いているのですが……Ⅰで既に張り巡らされていた伏線の数々におののいています。  例えば、崖から落ちる直前のメルジューヌの台詞。グウィードが見た写真の少年。シージャック犯たちの「祖国を失う痛み」と、それをぶつけられるマクスウェル。  細かい所では、船上のモブの噂話。彼女と、あと彼!?  ニヤッとするのは、グウィードとトランクと女子の下着。  ネタバレにならない程度に……。こういう所を覚えておくと、ますます面白く読み進められると思います(入り切らないのでコメントに繋ぎます)。
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 また、ミステリアスな少女メルジューヌ。今になってみると、彼女の仕草や表情、言葉のひとつひとつが……(このあたりはⅢのレビューで騒ぐ予定です)。  私は今まで、ATPは「読み進めるほどに面白くなる小説」だと思っていました。が、それに加えて、「完結後に読み返すと更に面白い小説」だったなんて!  もしもⅠを読み終えたばかりの自分に会えるなら、言ってやりたいです。「おめでとう。あんたは最高の小説に出会ったよ」 「それはもうわかってる」と興奮気味に返されるかもしれません。でも、更にこう言ってやります。 「いや、わりとガチで18%くらいしかわかってない。文字数的にも内容的にも。ATPは、これから110%
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戦 雪さま、この度は愛のあるレビューをありがとうございます…!大好きな作家さんである戦さんにレビューをいただけるだけでも感激なのですが、特に内容と勢いに沢山笑わせていただきました! まず、トラックの下……そこ?!ありえないだろと罵られる覚悟でしたが、まさかそんなところでツボってくださる方がおられるとは、世の中不思議に満ちているなと思いました。 そして、2話ですね。いきなり舞台が海になることについて、読者はどう思うのだろう?と常に不安を感じているのですが、確かにこれぞATP…!というところかもしれないと気付かされました。意外と移動しますもんね。これからは自信をもって、船の上なんて序の口だぜ!と
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