ⅢはATPを忘れられなくなるBIG LOVE編
(注意)本当に重大なネタバレしかないので、読者の皆様、読了前にここを覗いてはいけません。読んだ? 本当に読んだ? ではよろしくお願いします(涙涙涙)  ATP完結。Ⅲでは船長、そしてエアロンとメルジューヌの茨の道が描かれました。それと同時に、数多くのキャラクター達の物語が見事に決着します。  まずは船長……。記憶を失ったまま生かされてきた男が、命も顧みず過去を追い求めました。  これにより、科学者ウォルターの狂気、国科技研の恐ろしい全容が暴かれていきます。更に、タチアナの罪、アラストルの執念、ミナギの試練、アクバルの新たな道、ルチアの決意……彼を取り巻く人々の物語も緻密に描かれ、ATPという重厚な物語を織り成していきます。  歌姫ツェツィーリアはウォルターの恋人。でも、船長との切ない交流や、美しい歌声は、まるでふたりこそが悲劇の恋人同士であると錯覚する雰囲気を醸します。ウォルターによって奪われるツェツィーリアの命。その向こうに、船長は愛しい人の面影を見たでしょうか。  目を覆いたくなるような苦しみの果て、船長はようやく失ったものを見つけました、どうしようもなく失ったまま……。もう一度記憶を消すことで、古い自分を家族の元に送り出すという決断を下します。  これを認め、リベラトーレというまっさらな男を受け入れていく決意をしたキャラクター達。海のように広く深い愛の形を目の当たりにし、心が震えました。  一方、船長の物語の進行と共に、エアロンとメルジューヌは思いがけないほど交友を温めてくれました。  メルジューヌが本当に可愛い! 嬉しそうで、楽しそうで、そして実はピュアな照れ屋さん。しかも美少女。もうメロメロにさせられます。  しかし、エアロンもまた己の過去に辿り着いてしまいます。それは同時に、メルジューヌの謎を解く鍵でもありました。  メルジューヌはふたりいた!  谷底に落下したメルジューヌは、確かにエアロンに殺されていた!  思えば、橋から落ちた直後に二人目が登場していて、セメイルとラスイルという瓜二つの兄妹もいて……ヒントは散りばめられていたのに。エアロンとシンクロしてがっつり衝撃を受けてしまいました (入り切らないのでコメントに繋ぎます)。
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 かつて、淡い紫の瞳を持つテレシアに出会ったエアロンは、同一人物か、別人かと大いに戸惑っていましたね。あれはとてつもなく正しい反応であったのだと思い至り、絶句しました……。  ふたりのメルジューヌ。彼女らの人生を奪ったのは、研究所から逃げ出してしまった自分であったのだと気づくエアロン。  あまりにも悲しい。あなたのせいじゃないよと言ってあげたいのに、現に姉のメルジューヌを殺してしまっているという事実。「あなたのせいであたしは死ぬの」という台詞がリフレインします。  せめて妹のメルジューヌの人生を取り戻そうと、エアロンは茨の道へ踏み出します。メルジューヌを奪い、仲間達も捨て、あまりにも孤独
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 塔は崩壊し、運命から解放されたメルジューヌ。エアロンとの最後の時を穏やかに過ごした後、待ち焦がれた至福の瞬間を迎えます。  姉と同じく水の底へ。けれど、エアロンと共に落ちて激流に消えた姉とは対称的に、妹はエアロンを残し、静かな湖にひとり沈んでいきました。 「あなたの物語がここから始まるの」  その台詞も同じなのに、今や全く違うものに聞こえます。  エアロンの愛を受け取らなかった妹。それを受け取った上で生きても、死んでも、きっとエアロンの人生はメルジューヌに奪われたままになってしまいました。  エアロンが彼女の人生を取り戻したいと願ったように、彼女もまた、エアロンには自分の人生を生き
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