昭島瑛子

創作における理想と現実のバランスと、子供たちの世界を守る大人たちの存在
『三上くんとナイショの図書館』はタイトルにある通り主人公・真凛と三上くんの関係を描いた作品なのですが、あえてその周辺に関する感想を書きます。 この作品の核と言えるのはやはり41ページの山村先生の言葉でしょう。この作品を読む子供たちの中には「こんないい先生いるわけない」と思ってしまう状況の子もいるかもしれません。 でも私は、フィクションだからこそ山村先生のような存在が大切だと思います。現実には嫌な先生ばかりでも、この作品の中の山村先生のセリフが子供の心の支えになるかもしれない。それがフィクションの役割だと思います。 フィクションならではの優しさに満ちた作品でありながら、現実の厳しさもきちんと描かれています。真凛が応募した海の物語大賞は「参加賞」という結果に終わります。初めて応募した物語でいきなり大賞を受賞するという夢のようなことは起きません。 しかし、ここにも子供たちの世界を守る大人がひっそりと描かれています。選評に「また次回もぜひ、お待ちしています」と書かれていたからこそ、真凛は次も頑張ろうという気持ちになり、ワクワクする未来を期待させる形で本作は終わります。 この作品を生み出した大人であるリコさんの優しさを感じられる作品でした。
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