橘 実来

ロマンティックなエゴイストたちの魅力全開
冒頭、どこか淡々として冷めた描写で描かれる衝撃的な「わんこ」に読者はみな目が釘付けになっているでしょう。これも作者が仕掛けた罠(伏線とも言う笑)に絡めとられていく序章とも知らずに。 衝撃的なプロローグからストーリーはゆっくりと熱を帯びていき読者を巻き込んで加速していきます。 登場するキャラクターたち。亜由美も貴哉先輩も、洸太くんも絵里ちゃんも。みんな若くて痛々しくてせつなくて。でもキラキラしている。そうして一筋縄ではいかない青春ストーリーを織り成していきます。 99年のあの空気感も懐かしい!ストーリーのなかにふんだんに織り込まれている楽曲名から一気にあの頃の景色も広がっていきます。当時を彩った懐かしい音楽たちを頭のなかで反芻しながらロマンティックなエゴイストたちが織りなすストーリーにハラハラしたり心が痛んだり。そうしてたどり着いたラスト。 人間はみんなダークな部分を持っている。そのくせ天使みたいに侵しがたい美しさももっていて。だからこそ世の中一筋縄ではいかなくて、せつなくて楽しい。 衝撃的な冒頭からきちんとすべての伏線を回収していく心地良さ。それでいて読後に残る優しい余韻。本作はロマンティック・エゴイストというタイトルにすべてが凝縮されていると改めて感じました。 身近にいるような不器用で魅力的キャラたちが奏でるストーリーの気持ちよさをぜひ堪能していただきたいと思います。
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