しのき美緒

波乱万丈の人生に逆転満塁ホームラン
エブリスタウンで起こる奇跡には、常人では起こしえない奇跡、幸せにダイレクトにつながる奇跡だけでなく、別の種類の奇跡も起こる。 ヒロインは記憶を失った40代の女性 寧音(ねね)。 立て続けに不幸に襲われる女性の前には、不思議な少年、温かい人たち。あたらしい家族が次々に現れる。 物語はうねるように進み、結婚式。人生のピークで彼女の記憶を超えた真実、悲しい真実があきらかになる。 知っていること気づいていたこと(主観や知識)以上の、当事者すら知りえない「真実」が明らかになる。これもやはり奇跡なのだ。 全くの個人的な考えだが、この優しくクレバーなヒロインは事実に気づきながら、記憶喪失によって真実を知ることを回避していたのではないだろうか。防衛反応である。 だが、偶然の姿でやってきた奇跡は、彼女のまわりでおきた不幸を洗いざらい彼女に教える。彼女がどう思ったのか、どういう行動にでるのかは描かれていない。が、不幸な事実を受け入れたことで彼女は不思議な少年を腕に抱くことができた。そして不思議な少年がさわったヒロインのおなかはほんのりあたたかい。 新しい生命が宿る象徴なのかな、そうだったらいいな、と寧音の幸福を願わずにはいられなかった。 蛇足ですが、これは長編に仕立て上げたら極上のミステリになるお話。忙しくて連載もしているから無理な注文だろうけど、読んでみたいと思いました。
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