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「パパがこんなにイヤがってるのにまだ分からんか、真子」
パパが悲しそうにつぶやくのが聞こえた。チクッと胸が痛んだ。
「パパ……ごめんなさい。でもパットさんに会いたいの」
「パパが止めてもか」
「はい」
あたしはキッパリ言い切った。これだけは譲れない。
パパはあたしにつかつかと歩み寄ると右手を振り上げた。
パシッ!……パリーン!
左のほっぺがちぎれそうだった。さすが毎週末ゴルフで鍛えているだけのことはある。パパの腕の振りは力強く、的を得ていた。
ほっぺを打つ音に次いで、ガラスの砕ける音。メガネが飛んでレンズが片方割れていた。
あたしはメガネをつかむと、外に飛び出した。
☆☆☆
メガネがないと何も見えないあたしはフラフラしながらポンプ場の前にたどり着いた。
そこにはパットがいた。パツパツのワイシャツとピチピチのスーツに身を包んだ彼が天使に見えた。
あたしがプレゼントした洋服、やっぱりパットには小さかったみたい……。
ボタンが弾け飛ばないように猫背気味で歩くパット。足も曲げにくいみたいでロボットのような動きだ。サイズが合わないのに文句も言わずにあたしのプレゼントを身につけてくれてる。
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