3人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
事前事後
脱衣所で二人とも裸になり、お風呂場の中に入り、空いた所で隣に座り頭や体を洗いました。
僕が目が悪いもので、どちらかが先に行ってしまうと毎回僕が父を探すようになってしまいます。父もそれをわかってか、合わせてくれます。
洗い終わり、まず41・2℃ある僕の大好きなジャグジーの所にいきました。疲れた時や腰にキテる時はココが最高なんです。
父も出入りする階段を挟んで隣に浸かりました。
"あぁ~生き返る"有りがちな事を思い肩まで浸かりしばらくジャグジーに打たれてました。
途中父が"上がるけんのぉ"と言い先に上がりました。
父の行き先は露天風呂って知ってましたから、僕も露天風呂に行こうッッと思いお風呂から立ち上がり、階段を上がりました。
"あぁ~今日も立ちくらみがくるなぁ…"
ピーポピーポピーポ
僕は救急車の中にいました。
僕の頭の中はパニック状態です。
何もかも思い出せません。
"今日は何日だ?"
『今日は何日ですかぁ?』と僕が聞く。
すると右斜め下にいた父が『1月10日じゃってさっきもゆうとるじゃろうが』と返してくる。
"あっ…父さんいるんだ"
"1月10日??"
『えっ…わからん。』
まさに狐につままれたようでした。
なぜ僕がここにいるのか全く理解出来ず、急にタイムスリップしてこの状況になってるとしか考えられなかったのです。
"1月って…もう年越しの?もうそんな日?ていうかいつから記憶がないの??"
考えても考えてもその時は答えは出てきませんでした。
そして、ある重大な事に気が付きました。
"あれっ?…えっ??歯がない!?"
前歯が1本ともう一つの前歯が半分以上かけてたんです。
父に『歯は?俺の歯は?』と聞きました。
『歯は大丈夫じゃ!ちゃんと取ってある!さっきも言ったじゃろうが。』
"訳がわからん…"
舌で何度触ってもあるはずの前歯がない。あるのは少し残った断片がザラザラした歯と柔らかい歯茎、そしてほんのりと血の味がするだけ。
救急隊員の人に『自分の住所わかる?』と聞かれました。
もちろん住所はわかり『○○郡○○町○○丘8○?○7?○○1です』と答えました。
…意識が朦朧とする中、暫く揺られ僕は目を閉じていました。
最初のコメントを投稿しよう!