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時計と本棚しかない部屋。そこに若い男と青年がいた。
「……うぇ、これ二日酔いだな」
男は顔を青ざめながら言って大きな古時計にもたれかかった。男は黒いスーツで肩にかかるぐらいの髪の長さをしている。
「……それは世界全体の時間を調整するものですからあまりいじると時間の歪みができますよ」
近くで本を読んでいる青年が目を全く向けずに言った。
「……おぇ、もたれかかんねえとやべえんだ…おうぇ、なんか出てきそう、今あったかいのが喉まできてる」
男は自分の口を押される。
「……後始末は自分でお願いしますよ」
「ならバケ―――
「うわ~、これはこれは」
部屋の外から入ってきた少年は笑顔で男を見た。
「ちくしょう……2度と酒なんて飲まねえ」
「そう言ってる人は大概飲むんだけどね~」
「……うるせえ」
少年の指摘に男は睨みながら応えた。
少年はニコニコと笑顔のままポケットから1枚のメモを取り出した。
「さて、今回君に行ってもらう場所はここだけどいいかな?」
「……構わねえよ。こっちも仕事だからな。ったく、めんどくせぇ」
男はそう言うと立ち上がり、少年のメモを受け取って部屋を出た。
「……後片付け」
それでも青年は本から目を離さなかった。
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