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「僕は嫌だ」
「香織様……何故ですか?」
香織さんは少し俯いたまま言う。
「僕は優也と二人で帰りたい」
それじゃあ、雫さんだけの問題じゃない。
「なんだよそれ。皆で帰れば良いじゃん」
芽依さんがため息をつきながら言う。
舞さんも頷いている。
「優也が僕の願いを聞くなら良いよ」
俺が?
執事であるから、主人の命令を聞くのは当然だが。
「私ですか?別に良いですけど」
そう言った瞬間。
香織さんは一気に笑顔になり、沙由さんたちは呆れた顔をする。
なるほど……これが狙いだったと。
「帰ったら言うから、今は帰ろ~」
香織さんは元気良く、先頭を歩く。
「大変だね」
沙由さんが俺の横を通り過ぎる時に言う。
「頑張ってください」
舞さんも言う。
「変な事だったら断れよ。多分、確実に変な事だが」
芽依さんは俺の肩を叩き、沙由さんたちに着いて行く。
「……」
雫さんだけ、何故か俺を見ていた。
「雫さん?」
「……あ……」
ピクッと反応して、トコトコ歩き出した。
やはり小さい。
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