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記憶がない。
それは欝すらとした霞みが掛かったように、頭の中が真っ白な感覚だった。
今分かるのは、シャルジースという名前と十七という年齢に、ここがどこかの森という事。そしていかにも肉食な魔物に、囲まれているという事だけだった。
狼のようにも見えるが普通の狼に角は無いはずだ。なぜここに居るのかとか、何で記憶がハッキリしないのかとか疑問はあるが、今の最優先事項はどうやって助かるか、だ。
手元に武器が無いか腰に手をやるが、剣やナイフは無い。自分の魔力を探ってみるが、何故かほとんど無かった。
魔物達はそんな僕に容赦などするはずもなく、ゆっくりと間合いを積めてくる。
――僕はここで食べられてしまうのだろうか? 僕は変に冷静で、特に死が恐いとは思えなかった。
頭がぼうっとする。
もちろん……死にたいという訳ではないが。
「あっ、ここにも魔物がいたんだ」
突然場違いな女性の声が耳に届き、次の瞬間激しい爆音が鳴り響く。僕を囲っていた魔物達は、地面を大きく抉る爆発で吹き飛んだ。
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