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妻の機嫌が昨日から治らない。
朝食も僕の分だけ作ってくれなかった。
「そう怒るなよ。しょうがないだろう。仕事なんだから」
妻のご機嫌を取るように言ってみた。
でも、妻の機嫌はそう簡単には直らない事を長年の経験で知っている。
玄関で娘の茉莉と一緒に靴を履いている妻の背中は不機嫌オーラで漂っていた。
「茉莉。パパの事許しちゃ駄目よ」
「うん。パパ。ゆるさない」
三歳の娘、茉莉が舌足らずな口調で妻に賛同した。
「お前、茉莉を味方につけるなんてずるいぞ」
「正月に仕事を入れた貴方が悪いんでしょ。家族三人で実家でゆっくりしようと約束してたのに」
「入れたんじゃない。入れられたんだ。部長の命令には逆らえないよ」
「言い訳なんて聞きません」
妻はそう言って旅行用カバンを片手に娘と一緒に立ち上がった。
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