一つの文

3/7
78人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
俺は車を飛ばしていた。 行く先は彼女の家だった。 …しかしそこに彼女はいない。 夜の闇がやけに寂しく感じた。 ハンドルを握る手がべっとりとしている。 俺の体の中の油という油がそこから吹き出ているようだ…。 …それだけじゃない。 アクセルを踏む足は震えている。 目は涙で血走り、妙に痛い。 人はここまで焦ることがあるのだろうか? 少なくとも今日までそんな経験ありはしなかった。 心臓は握られるを通り越してまるでプレス機にでもかけられたように縮こまり、 それゆえに血が暴発するほど心拍数が上がっていた。   …なぜ俺がここまで焦っているか。 きっと誰も予想し得ないだろう。             恋人が警察に捕まったのだ。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!