勇気の神様

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今日はクラス替えだったんですが、同じ教室に今朝の彼女はいませんでした。 うーん……なかなか上手くいかないもんっすね。 変わりにいるのは……。 「今年は同じクラスだね、恋」 「はい!! 恋にとってこれ以上の幸せはありません……」 俺の友達の田中祐一と、その彼女樋口恋さんです。 もう超がつくバカップルなので、早いとこ死んでくれないかなぁーといつも思ってます。しかも俺の後ろでラブラブフィールドを展開しやがって……。 「浮かない顔してますね、祐亜」 ふいに横から頬を指でつつかれました。そっちに視線をやると、そこには俺の幼なじみの柊葵が立っていました。 肩にかかるぐらいの淡い栗色の髪をしていて、眼鏡をかけた結構可愛らしい顔立ちをしていて男子から人気もあるんですが、俺の場合は近すぎて恋愛感情は沸いてきませんね。姉弟みたいなもんです。 「いやぁ……今朝凄く可愛い女の子と会ったんだけどさ……世の中ギャルゲみたいには上手くいかないなっと思って」 「ギャルゲ? なんですか、それ?」 「あぁ……知らなくていい、知らなくて。君のような人種には一生関わり合いのないものだよ」 「むっ……なんかムカつきます!」 思えば俺に彼女が出来ないのは、葵のせいかも知れませんね。傍目から見たら、俺と葵はどう見ても付き合ってるように見えるらしいですし。 まぁ、葵と適当に一つの机はさんでだべっていると担任が教室に入ってきました。 生徒たちは皆散り散りに自分の机へと戻っていきます。 「祐亜、また後で」 「あいよ」 自分の席を戻っていく葵の背中を見ながらも、俺はあの女の子のことをひたすら考えていました。 名前も聞けなくて、その背中をただ見送っていた自分はなんとチキンな存在だったのかと。 あぁ……喉がかゆくなってきました。
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