81人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
キーンコーンカーンコーン――。
「それでは、今日の授業はここまで。宿題を忘れずに」
教壇に立つ僕は、生徒に笑顔を向けた。
授業から解放された生徒達は、礼もままならずに各々散っていく。
中学生は元気がいいな。
自分が中学の頃を思い出し、懐かしい気分になりながら教室をあとにした。
季節は秋。
もうすぐ冬の便りが届くであろう11月に入ったばかり。
教員生活も3年目になり、少しは慣れ親しんだ校舎の窓から、夕日が差し込んでいた。
「紫月セーンセ!」
「はい?」
呼ばれた声に振り向くと、女生徒が数人集まっていた。
「どうかしましたか?」
僕が笑顔を作ると、生徒のひとりが顔を紅潮させて、早口で話始める。
「保健の安達先生に赤ちゃんが出来たんだって! それでね……」
「代わりの保健の先生が来るのは、今朝の会議で聞きましたよ」
そう言って話を区切ると、生徒達はまだ話し足りないのか、次の言葉を投げて来た。
「でも、どんな先生が来るのか知らないでしょ!」
確かに、誰が後任なのかはまだ知らされていない。生徒達が先に知っている理由を聞こうとした、その時だった。
「よう、久しぶりだな浅陽!」
え……?
最初のコメントを投稿しよう!