222人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
1.ヒロイン登場
20XX年元旦の日本。
スタジオでは、復活したスター隠し芸大会が、生放送の真っ最中であった。
ちょうど、『元祖Mr.隠し芸』が、バンジー書初めを成功させたところ。
老体にむち打ちながらも、その技と発想は健在で、視聴者に驚きと感動を与え続けている。
『バンジー書初め』については想像にお任せしよう。
『いやいや、天晴れでございました!。見ている方が寿命が縮まる思いで…。』
緊張の後に、司会者が軽い笑いを誘う。
~ラブの楽屋~
『…そんな…まさか…。どうして彼女が………。』
遠い目で鏡を見つめる。
『分かりました。後ほど…。』
唇を噛み締め、ラブは携帯を切った。
沈黙の中、悔しさがこみ上げてくる。
『…ァァアーッ!!』
(ガシャン!)
叫びと共に伸ばした拳に、壁の鏡が砕け散った。
『どうしてなの…ララ…』
頬を涙がつたう。
『大丈夫ですかぁ?そろそろお願いしま~す。』
ノックの後、スタッフが出番を告げる。
目を閉じて、一度だけ大きく深呼吸をして、涙を拭いた。
噛み締めた唇に滲んだ血をティッシュで拭き、ゆっくりと席を立つ。
~スタジオ~
『さて、皆さんお待ちかね。今年もオオトリは、彼女!!スーパーアイドル、トーイ・ラブさんで~す!』
スタジオが大きな拍手に包まれる中、スモークの立ち込めるゲートから彼女が登場!
身長160センチ、42キロ。
ショートパンツからスラリと伸びた脚にはプラチナのアンクレット。
ピンクにシルバーとゴールドの☆が入ったヒール。
濃いブラウンのショートヘアーにはスターダストの装飾。
胸はサポーターで押さえ、白いシャツに黒のショートジャケット。
全て有名ブランドスポンサーの提供である。
最も重要なのは、誰もを幸せな気持ちにする優しい顔立ち、そして笑顔。
これが、世界中から愛されるラブのスタイルである。
最初のコメントを投稿しよう!