18320人が本棚に入れています
本棚に追加
/262ページ
その様子を見た篠田は、ふぅっとため息をつくと、ゆっくり口を開く。
篠田の話は――――
想像を越えたものだった。
聞かなければ良かった。
そう、思うほどに。
「ここは、『天使』と呼ばれる『理想の子供』を創る、そのためだけに存在している」
「理想の子供……」
「そう。この建物と土地の持ち主である水谷信也を教祖とした新興宗教『神臨教』、神は降臨する、とかってのを信じてる奴らのために、『天使』を創ってるんだよ」
茜から聞いていたので、知っている話だった。
信仰の象徴として利用するのかと思ったのだが、篠田はあたしの考えがわかったかのように、話を続ける。
「『天使』と聞いてなにを想像する?」
「白い服を着たり、羽根があったり……」
篠田はぶっと吹き出して笑う。
「いやいや……ビジュアルじゃなかったんだけど、いいよ。
羽根……そうだね。
普通の人間とは違う存在、そう思うよね」
篠田は再び真剣な顔に戻り、まっすぐな視線を向けた。
「水谷は求めた。
奇跡の力を持つ子供を」
奇跡の力。
すぐに草汰と和真の不思議な力を思い出す。
まさか、あれが?
「そう。
もうわかってるだろうけど、【レッド】が持つ超能力、あれこそが奇跡の力であり、『天使』としての表れなんだよ」
「そんな……
だって、和真君には最初、そんな力なんてなかった!」
「……黒木修一はね、その力を人工的に生みだす研究をしていたんだ」
「人工、的?」
「そう。超能力ってね、科学で解明しようと研究してる人もいるんだよ。
大体はインチキだけどね。
中には本物もあるんだ」
篠田は立ち上がり、部屋の隅にある机の上からガラスのコップを手にする。
「例えばこれ。
触れずに割る力を、テレキネシスやサイコキネシスという。
テレキネシスは自らの念をつかい、サイコキネシスは物理的エネルギーをつかう。
どちらもね、非現実的な力だ。
もちろん証明もない。
でもね、黒木修一はできたんだよ。
人にその力を与えるという事が」
最初のコメントを投稿しよう!