理想ノ子供

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その様子を見た篠田は、ふぅっとため息をつくと、ゆっくり口を開く。 篠田の話は―――― 想像を越えたものだった。 聞かなければ良かった。 そう、思うほどに。 「ここは、『天使』と呼ばれる『理想の子供』を創る、そのためだけに存在している」 「理想の子供……」 「そう。この建物と土地の持ち主である水谷信也を教祖とした新興宗教『神臨教』、神は降臨する、とかってのを信じてる奴らのために、『天使』を創ってるんだよ」 茜から聞いていたので、知っている話だった。 信仰の象徴として利用するのかと思ったのだが、篠田はあたしの考えがわかったかのように、話を続ける。 「『天使』と聞いてなにを想像する?」 「白い服を着たり、羽根があったり……」 篠田はぶっと吹き出して笑う。 「いやいや……ビジュアルじゃなかったんだけど、いいよ。 羽根……そうだね。 普通の人間とは違う存在、そう思うよね」 篠田は再び真剣な顔に戻り、まっすぐな視線を向けた。 「水谷は求めた。 奇跡の力を持つ子供を」 奇跡の力。 すぐに草汰と和真の不思議な力を思い出す。 まさか、あれが? 「そう。 もうわかってるだろうけど、【レッド】が持つ超能力、あれこそが奇跡の力であり、『天使』としての表れなんだよ」 「そんな…… だって、和真君には最初、そんな力なんてなかった!」 「……黒木修一はね、その力を人工的に生みだす研究をしていたんだ」 「人工、的?」 「そう。超能力ってね、科学で解明しようと研究してる人もいるんだよ。 大体はインチキだけどね。 中には本物もあるんだ」 篠田は立ち上がり、部屋の隅にある机の上からガラスのコップを手にする。 「例えばこれ。 触れずに割る力を、テレキネシスやサイコキネシスという。 テレキネシスは自らの念をつかい、サイコキネシスは物理的エネルギーをつかう。 どちらもね、非現実的な力だ。 もちろん証明もない。 でもね、黒木修一はできたんだよ。 人にその力を与えるという事が」
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