君の一縷 

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「こんにちは。今日はすみません、お迎え。」   人をかきわけやっと彼のところにたどり着いて、私はまず言った。   「何や水くさいなぁ。ほら、荷物かして、持ったるから。」   「……え!? 結構です、大丈夫です!」   ギョッとして身構えた私を見て、男は一瞬目をまん丸にした。   「オレ引ったくりみたいやん!」   それから大きな声でケラケラ笑い出した。   私が慌てたり困った顔をしたのがそんなに面白かったのかしら……。 少しだけ気分を損ねたけれど、私はこのお迎えの人がいなければ今日の同窓会の会場には行けないし、何より笑顔が人なつっこくて、どこか憎めない感じがして、気がつくと、私もつられてクスリと笑っていた。
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