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内心舌打ちをしながらも、表情には全く表さない雫。
何気に愁の扱いが酷い感じもするが、雫が気にするわけがなかった。
「お出かけですか?」
道を譲るように脇に避けながら、雫はロイに尋ねる。
レイラのメイド服もそうだが、ロイの着るえんび服などにも慣れてしまった。
やはり、恐るべし都会。
そして、恐るべし人間の順応能力―――
「雫様……?」
「―――気にしないでください。」
気がつくと、ロイの顔を凝視していたようだ。
雫は内心の動揺を見せることなく謝り、さらに道を譲る。
しかし、ロイはそこから動こうとはしなかった。
「ロイさん……?」
訝しげに声をかければ、ロイは淡い笑みを零す。
「レイラは愁様につかないといけませんので、本日は私がお供いたします。」
「…………」
予想もしなかったロイの言葉に、雫は見事に無言で返す。
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