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「―――散歩ですよ?」
「お供いたします。」
「ほんの少し、街を見るだけです。」
「お供いたします。」
「…………」
何を言っても、返ってくるのは同じ言葉。
その頑固な態度に、雫は深くため息をつく。
そして何も言わずに、ロイに背中を向けた。
「雫様。」
「何を言っても、ついてくるつもりでしょう……?」
本来一人の時間を好む雫だが、ロイの意思を曲げることはできなかった。
内心一人じゃないことに落胆しながらも、雫は静かに門を出る。
そんな雫の斜め後ろを、ロイは微笑みを浮かべながらついてくる。
そんな二人の姿は、何とも異様なものだった。
「本日は、どちらまで……?」
「ただの散歩ですよ。」
ちらりと斜め後ろに視線を向けながら、雫は淡々と言う。
こうして、何とも言えないコンビの散歩が始まった。
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