さくら

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 いかにも安そうなボロボロの畳にダラダラと寝転がる。  こないだ卒論を出してからは大学はあまり行っていない。  すでに卒業も就職先も決まった俺は再来週の受験に向けて勉強にいそしむお隣さんを尻目に暇を持て余していた。  どうせなら遊びまくりたいのだが、残念ながら今日に限って予定がない。  暇つぶしにつけたテレビもこんな時間じゃニュースかワイドショーくらいしかやってない。 「へー通り魔か、案外近いな」  近場の通り魔のニュースが切り替わり、どこかで見たことのある風景が映る。 「あれ? ここ釧路?」  地元の景色が映ったことに少しの興奮を覚えながら話半分に聞いていたニュースキャスターの声に耳をかたむける。 『昨日、釧路市○○町の廃墟にて少女の死体が発見されました。少女は心臓に持病を患っており、寒さによる発作により死亡したと見られております。少女は近所の病院に入院していた美容師の――』  俺は自分の興奮が収まっていくのを感じていた。  いくら地元がテレビに映っているといえ、こんな暗いニュース、気持ちがいいわけがない。  なんとなくイライラを感じ、テレビの電源を落とそうとベッドから立ち上がる。『死亡したのは、美容師の小柳 さくらさんで、どのような経緯で病院を抜け出したのか捜査が進められています』 「さく、ら……?」  聞き覚えのあるその名前に、テレビの電源を切ろうとしていた俺の動きが止まる。  小柳 さくら、それは小学校の時の同級生で、幼なじみみたいな存在だった。  中学に入るときに俺が転校してそれきりになっていたが、まさか死んでしまったなんて……  呆然としていた俺の耳にニュースの続きが飛び込んでくる。 『さくらさんの亡くなった廃墟は、数年前はプラネタリウムであり、彼女はプラネタリウムの座席に座ったまま亡くなっていたようです』  ……思い出した。  昨日は、三月一日。  22歳の三月一日。  ……なら、あいつが死んだのは、俺の所為?  俺は考えるよりも早く、パソコンの電源を入れた。  釧路への飛行機の切符を取るために。  さくらとの約束を果たすために。
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