第二十四章 終焉の果て

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反重力を脚に、今度は前へ突っ走るために集中させ、踏ん張り、ばねのようにして飛び出した。   風が私に抵抗を与える。だが一瞬で最大加速をしたこの身体には意味を為さない。これがたとえ目に映ろうとも……   勢いを止めず、速さを保ったまま練り上げた拳を右胸へと定めた。   当然師は軌道を読んでおり、上体を反ってそれをかわそうとしてくる。   「ハァッ!!」   だから私は気合いと共に無理矢理重力によって腕の方向を変え、地へと向けさせた。   当たらなくていい。この一発は強大な重力を利用し、相手を完全停止させるための布石。   本日二回目となる地を這う揺れは、師を中心として大きな負荷を作り出した。   「ヌゥッ!?」   目でいくら追えたとしても、こうなれば全て同じ。   「羅刹流……剛三段!!」   一撃目。急所となる心臓を力の限り正拳で突き、二撃目。さらに首を下から蹴り上げる。最後に三撃目。脳天を踵落としで沈めた。   顔にかかった返り血を腕で乱暴に拭う。師は初めて全身を横にして倒れた。ただの羅刹流技ではない。重力も加えた、今ある最も強い力技。これで決まっていないのなら……   「クックックッ……」   本能。そうとしか表しようがない。その本能が私を師から遠ざけた。   師は単に笑い声を出しただけだ。それだけなのに……この吹き出る汗は、高まる鼓動は一体何なんだ?   「こうまでわしがやられるとはな……」   片膝に手を置き、顔を上げ、時間をかけて二本の足を伸ばしながら立ち上がる。  
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