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口の中に広がる懐かしい味、その懐かしい味がする物を、少年は口の中でコロコロと転がした。
その日は、雲一つ無い快晴。少年の心を悟したように、自然は少し強い風で少年の背中を押した。
春風が吹く中、少年の瞳に何かが映った。青い鳥、青い空、青い人?
それがなんであったかは、少年もわからない。ただ、青かった。
全てを飲み込む程、全てを許せる程、ありのままに温かく、青かった。
探して行く。空の下から、手を伸ばして……。
願ってみる。何かの為に、モノの為……。
「見つかるよね!」
少年は叫んだ。ただ、一面に広がる、青い空に向かって……呼んでみる。瞳に映った、青い何かを。
「ねぇ、教えて神様。ボクは何を探せばいいの?」
そう言って、少年は両手を空に突き出した。でも、神様は何も言わない。膨れた少年は、道端に落ちていた空き缶を蹴飛ばした。
地面を転がって行く空き缶を見ながら、少年は動きを止めて、瞳に映ったモノを思い出す。
「……。そうか! ボクがいつも想っていた物なんだ」
そう言って、少年は走り出す。力いっぱいに走り出す。学校の脇にある狭い山道を、少年は一気に走り抜ける。
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