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「しっかし、こうやって小木原とサシ飲みする日が来るなんてなぁ」
両肘をカウンターに置いて左手で頬杖を着く久藤が、感慨深げに改まって言う。
「田辺はまだしも、衣野と本宮がハシゴしないで帰るとは思わなかっただろ」
「小木原もあいつらと一緒に帰るかと思った。まさか付き合ってくれるなんてな」
「そっちこそ。俺とサシ飲みするぐらいなら解散すんのかと」
互いに真っ直ぐ前を向いたまま淡々とそんな会話をしていると、久藤が。
「いやー?前々から小木原と二人でゆっくり話してみたかったしチャンスだと思ったね、逆に」
余りにもさらっと言うから、少し面食らった俺は久藤の横顔を見た。
「小木原の方もそうだから今こうしてんだろ?」
久藤もこっちに顔を向けて俺と目を合わせてふっと微笑し、その余裕たっぷりな言動が何だか無性に鼻に付く。
初対面だった四年前の本宮の結婚式では、俺に対して子供みたいに敵意を剥き出していた癖に。
「なに、彩芽とのあれこれ聞きたいのか?」
「まさか。そんなん他から聞いてるし今更もういいわ」
俺と久藤が二人でじっくり話す題材といえば『彩芽について』だろうと思っていたのに、久藤はあっけらかんと笑った。
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