プロローグ

2/8
18189人が本棚に入れています
本棚に追加
/1007ページ
……雪がちらほらと舞い降りている。 それはどこか赤く見えるのは果たして気のせいだろうか? 彼は腕をのばして、花びらのような雪に触れてみた。 雪は彼の手の平に触れ、その体温ですぐに溶けて消える。 「…………」 彼はゆっくりと夜空を見上げて、「なるほど」と呟いた。 星の姿はひとつもない。 しかし明るい夜空だった。 どこか不気味さのようなものを覚える。 頭上には大きな満月がひとつ、浮かんでいた。 しかも、血のような赤に見える。 月だけがこの場の惨劇を知っているように彼――青年には思えた。 黒い髪と黒い目。顔立ちは高校生くらいに見えるが年齢は二十三歳なのだ。 黒い服と安全靴。 ――胸元で揺れるのは黒い二本の『剣』がクロスになった形をしたペンダントだった。 彼は手にしていた双剣を地面に突き刺す。 それからあたりを見回した。 彼のまわりには血の海が広がっている…… .
/1007ページ

最初のコメントを投稿しよう!