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……雪がちらほらと舞い降りている。
それはどこか赤く見えるのは果たして気のせいだろうか?
彼は腕をのばして、花びらのような雪に触れてみた。
雪は彼の手の平に触れ、その体温ですぐに溶けて消える。
「…………」
彼はゆっくりと夜空を見上げて、「なるほど」と呟いた。
星の姿はひとつもない。
しかし明るい夜空だった。
どこか不気味さのようなものを覚える。
頭上には大きな満月がひとつ、浮かんでいた。
しかも、血のような赤に見える。
月だけがこの場の惨劇を知っているように彼――青年には思えた。
黒い髪と黒い目。顔立ちは高校生くらいに見えるが年齢は二十三歳なのだ。
黒い服と安全靴。
――胸元で揺れるのは黒い二本の『剣』がクロスになった形をしたペンダントだった。
彼は手にしていた双剣を地面に突き刺す。
それからあたりを見回した。
彼のまわりには血の海が広がっている……
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