第二章 傘とアリバイ

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「松坂さん、いいのよ。父がどうして死んでしまったのかをちゃんと知りたいもの。」 楓は松坂をなだめた。 「ありがとうございます。じゃあ手短に。大神先生は雨宮拓郎さんのコンサートに行っていましたが、その様に何か見に行ったりという時は、いつも一人で行ってらっしゃるそうですね。なぜですか?」 「父は持て囃されるのが大嫌いで、個人主義者でもあったからそういう場所には一人で出掛けるんです。」 「なるほど、傲り集りの無い方なんですね。すばらしいです。」 「お世辞はいいわ。父はそういうのも嫌いだった。」 楓はどこか違う方を見ながら突き放す様に言った。 「すみません。今日、大神さんは何時頃に出ていかれました?」 「正確な時間は知りません。ただお昼頃にはふらっと出てました。」 「そうですか。あの、楓さんは雨宮さんと婚約されてたんですよね?」 「ええ、そうです。」 「そんな事が事件と関係あるのか!くだらない!」 松坂が間に入った。楓の事を思ってか、自身の苛立ちの募らせているのか、かなり気が立っている。 「ごめんなさい、これで最後ですから。」 志津里は松坂に軽く頭を下げた。
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