第十九章 救世主

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鮫島が険しい表情で語り始めた。 「俺はここまでたどり着く途中、様々な光景を見てきたが、ありゃ地獄だ。 人が人を喰らってやがる。 東北自動車道や三陸道、国道4号に向かったら終わりだ。 そっちの道を選択した奴らは全員死んだ。 慢性的な渋滞を引き起こしていて、車が全く進みやしねえ。 おたおたしてる内に、噛みつかれて終わりだ。 人が普段通らねえような道路を選択した奴は全員助かった。 だから俺達は、このままこの山道を通って、蔵王から白石へ抜けよう。 それが安全だ」 杉崎は、鮫島の話を聞いて、自分達の選択してきた道のりが間違いではなかったのだなと確信した。 「それじゃ荷物を……」 と、杉崎が言いかけた瞬間だった。 ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン 一階部分で、見張りをしていたクロがけたたましく吠え始めた。 部屋の空気が一瞬にして凍りつき、一同に緊張が走った。 「チッ! 感染者か!?」 鮫島が懐から拳銃を取り出しながら叫んだ。 バタバタと階段を降り、皆で一階に移動した。 相変わらずクロはけたたましく吠え続けている。
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