約束

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 なぜ俺がこのような状態にあるのかというと。  それは一度目に訪問した際。  しまった事に王の間までの通路を覚えるのをすっかり忘れ、仕方なく朧げに見える記憶と勘を頼りに歩いていれば、現在の終点、渡り廊下までとたどり着いた。  しかしその前に、俺の姿を視認した女の1人が、突然悲鳴を上げたかと思えばその声を聞き付けた衛兵達がわらわらとここまで駆け付けたというわけだ。  どうやら俺は不法侵入者らしい。  いちいち断りを入れなくては足を踏み入れる事も許されない人間界は、なんて面倒なのだろう。  そう思いはしたがここは人間のルールに従った方が無難だ。  あまり顰蹙(ヒンシュク)を買うのは好ましくないし、もしかしたらメルシアの元まで連れていって貰えるかもしれない。  そう考えた俺は、大人しく捕われ、衛兵達が進む先へと足を進めた。
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