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『忘れたくても忘れられないのは、忘れたいのが気持ちそのものだから。人は気持ちを捨てられないから、ずっと忘れられない』
浩二は部屋に転がりながらふと、そんな言葉を思い出した。
なるほど、と思う。
正に、浩二の状況はそうだった。
女日照りが続いているわけではない。だが、浩二の頭から梨加の存在が消えることはなかった。
浩二が中学生だった頃、梨加という名の少女と交際していた。
拙い言葉でも、しっかり気持ちを伝えていれば、不自然な別れ方をせずにすんだのかもしれない。
照れが勝ってしまったのは、今となっては後悔しても仕方がないのだし、今更どうこうというわけではない。
ただ、浩二は忘れられないでいる。
ただ、それだけ。
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