第一章 浩二

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『忘れたくても忘れられないのは、忘れたいのが気持ちそのものだから。人は気持ちを捨てられないから、ずっと忘れられない』 浩二は部屋に転がりながらふと、そんな言葉を思い出した。 なるほど、と思う。 正に、浩二の状況はそうだった。 女日照りが続いているわけではない。だが、浩二の頭から梨加の存在が消えることはなかった。 浩二が中学生だった頃、梨加という名の少女と交際していた。 拙い言葉でも、しっかり気持ちを伝えていれば、不自然な別れ方をせずにすんだのかもしれない。 照れが勝ってしまったのは、今となっては後悔しても仕方がないのだし、今更どうこうというわけではない。 ただ、浩二は忘れられないでいる。 ただ、それだけ。
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