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初めに見えたのは白い天井だった。
ぼやけた視界で、普段はしないのにぼんやりとその天井を見つめた。
ここがどこだか分からなかったから。
「レイ」
遠慮がちな女の声が聞こえた。
聞き覚えのある声だ。
私が首を声の方に傾けるのと、声の主がこちらを覗き込むのはほぼ同時だった。
見覚えのある女の顔だ。
その隣には見覚えのある男がいる。
2人揃って、顔を歪めて私を見てる。
私を心配してるの?
なのに、私は2人の名前を口にする事ができない。
知ってる事を知ってる。
でも思い出せない。
それが戸惑いを生んで、私は動く事も声を出す事も出来ない。
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