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「ちょっと待ってて」
と女が制止した。
様子を窺いに行くのを
横目で確認すると同時に
胸に手をやり、呼吸を整える。
いっそ胸をこじ開けて心臓に
力を与えたい。
もうすぐ逢えるのに
こんな所でくたばるワケには
いかない。
額に噴き出る汗を拭った。
女が手招きしたので
俺はゆっくりと歩みを進めた。
「いい?5分。
5分しかないと思っておいて。
それ以上はないわ。」
女が念を押して扉を開けると
俺を押し入れて扉を閉めた。
さっきまでのどす黒い景色は
消え失せて
視界には美しい世界が
広がっていた。
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