5人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
とある大きな国に騒音王子と呼ばれる王子様がおりました。
太陽が昇っている間、大声で叫び続けているためです。
ですが、それにはある理由があったのです。
これはそんな王子様の悲しい物語。
王子様は欲しい物が何でも手に入るのに心が満たされることはありませんでした。
ある夜に王子様は「今宵は素晴らしい月夜だ」と言って、城の外に出ます。
すると月よりも輝く美しい女性が現れたのです。
王子様はその女性に一目見て恋をしてしまいました。
しかし、彼女は夜姫…夜しか姿を見せません。
それでも王子様は彼女に逢えるならと、毎晩のように夜姫に逢いに行きます。
王子様の優しさに夜姫も彼に心を許し、二人は愛し合うようになりました。
王子様は幸せでした。夜でしか逢えないけれど、愛する人と共に過ごせるのですから…。
ところが、そんな幸せは長くは続きませんでした。
二人の恋を知った夜王は大変怒り、ついには王子様に呪いをかけてしまったのです。
…太陽が昇っている間しか起きていられない呪い。
それでも王子様は夜姫を探しました。
雨の日も風の日も、毎日陽が暮れるまで…彼女への愛が夜の世界に届くくらいに彼女の名前を叫び続けます。
その声が枯れて消えゆくまで…
いつしか王子様の名前は忘れ去られ、騒音王子(ブラスト)と呼ばれるようになりました。
おしまい
最初のコメントを投稿しよう!