小木原 遼

27/27
10699人が本棚に入れています
本棚に追加
/375ページ
    ある年の3月17日。 あたしは衣野家の第二子、長女として生まれた。 「ほら、慎吾。彩芽よ」 「あやめ?」 「そう。慎吾の妹」 「いもうと?」 「そう。慎吾の妹の彩芽」 衣野家にはその日で丁度2才10ヶ月になった第一子の長男がいた。 女の子みたいに可愛い顔立ちの、明るく活発な男の子。 「ちっちゃーい。かわいー」 「ふふっ。可愛いでしょ」 「うん。あやめちゃんかわいー」 妹の誕生を喜んで可愛がる、やんちゃだけど優しい男の子。 「慎吾は今日からお兄ちゃんなんだから、彩芽を大事にしなきゃ駄目だぞ?」 「だいじ?」 「そう。慎吾が彩芽を守ってあげるんだ」 「なんで?」 「お兄ちゃんは妹を守るものだ。慎吾は強い男の子で、彩芽は弱い女の子だから」 「ふぅーん」 素直で真っ直ぐな男の子。 「じゃあわるいやついたらぼくがやっつける!ぼくがあやめちゃんまもる!」 格好良くて、優しくて、頼れる自慢のお兄ちゃん。 名前は、衣野 慎吾。 そしてあたしは一生、衣野 慎吾の妹。
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!