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ある年の3月17日。
あたしは衣野家の第二子、長女として生まれた。
「ほら、慎吾。彩芽よ」
「あやめ?」
「そう。慎吾の妹」
「いもうと?」
「そう。慎吾の妹の彩芽」
衣野家にはその日で丁度2才10ヶ月になった第一子の長男がいた。
女の子みたいに可愛い顔立ちの、明るく活発な男の子。
「ちっちゃーい。かわいー」
「ふふっ。可愛いでしょ」
「うん。あやめちゃんかわいー」
妹の誕生を喜んで可愛がる、やんちゃだけど優しい男の子。
「慎吾は今日からお兄ちゃんなんだから、彩芽を大事にしなきゃ駄目だぞ?」
「だいじ?」
「そう。慎吾が彩芽を守ってあげるんだ」
「なんで?」
「お兄ちゃんは妹を守るものだ。慎吾は強い男の子で、彩芽は弱い女の子だから」
「ふぅーん」
素直で真っ直ぐな男の子。
「じゃあわるいやついたらぼくがやっつける!ぼくがあやめちゃんまもる!」
格好良くて、優しくて、頼れる自慢のお兄ちゃん。
名前は、衣野 慎吾。
そしてあたしは一生、衣野 慎吾の妹。
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