母との約束

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 新しい実験を初めて数日。様々な生物を掛け合わせるだけじゃ物足りないから、今度の実験は血や毛髪などを基盤にした生物の掛け合わせを行なってみた。基盤はもちろん、捕らえた実験体の一人。  魔法で調整した培養液を詰めた巨大な管の中で、今は小さな肉塊が一定のリズムで震えている。細かい動きが生きている事を教えてくれた。 「デミウルゴス。今日の実験はここまでよ。もう遅いから寝ましょう」 「はぁい、ママ!」  返事をすぐにすると、ママについていって実験室を出た。廊下に出ると、確かに外はかなり夜が更けているのが分かるくらいに暗く、月の位置も真上を通り過ぎている。  洗い場に入り、自分の白衣を脱いで、ママの分も受け取った。大きなタライに魔法で出した水を入れ、白衣を投げ込む。メガネをその横の台に置く。  それから壁に掛かってるいつものマントを取ると、それを持って洗い場から出た。 「ねぇ、ママ。今日は寝る前にお話を聞きたいな」  寝室に向かう途中で、僕はいつものようにおねだりをする。いつもはママがこれまでにしてきた実験や、子供の頃の話、または作り話やおとぎ話を聞いていたのだけれど、今夜はそれではないものを聞きたくなった。今までずっと、聞いていなかった事を。 「いいわよ。今日はどんなお話がいいの?」 「僕が生まれた理由、僕を作ろうと思ったキッカケを、教えて」  ママの足が止まったから僕もそれに倣う。……聞いちゃいけない事だったのかな?ママは答えてくれない。  突然、ママが振り向いた。質素な衣服に身を包んでいるのに、どこか妖しく見えたのはママが月光に照らされてるからなのか、それともその微笑みが狂気を孕んでいるからなのか。けど、僕はそれを怖いとは思えない。むしろ、綺麗だと思う。 「いいわよ、教えてあげる。そろそろあなたにも教えて良い頃だしね」  澄んだ声が廊下に響いて、僕は喉を鳴らした。  
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