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「戦を経験してどれだけ男らしくなったかと来てみれば、また随分と情けない顔をするようになったな」
淡い月の光に照らし出された彼女は外見だけなら立派なお姫さまで、そんな姿は久しく記憶になかったように思う。
だから満足に彼女を見ることも、纏うドレスを誉めることもできないというのは言い訳にもならないか。
「……黙って席を立って悪かったよ」
もともと無理はあったのだ。
ファリナを失ったあの日から、一度だって上手く笑えていたとは思えない。
それでも、今日まではユオン・セナ・リ・デュナセリアの役を演じられていたはずなのに。
最も偽るべき彼女を偽り切れない、自分の不甲斐なさを憎む。
「そうやって謝る気持ちがあるのならアタシは構わないが、せっかくの祝いの席に主役が揃っていないリアン殿は大層困っておられるだろうな」
「兄上なら上手くやるさ。俺とは違ってそつがないから」
「そうだろうな。ユオンは昔から器用な方ではなかったよ」
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