18人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
さああ、と樹が風で揺れる。
見上げると、鮮やかな葉緑の隙間から日差しが差していた。
眩しさに目を細める。
周りには澄んだ色をした青空が広がっている。遠い地平線には雲がいくつか浮かんでいるのが見える。
青い大地を旅する小さな白い旅人、そんな言葉が浮かんだ。
樹の幹にそっと手をやると、乾いてひんやりとした感覚があった。
わずかに汗ばんだ掌に心地よくて、そのままそっと目をつぶった。
「――フレデリカ様」
青年の声が後ろからかかる。
振り向くと、従騎士がこちらへと歩いてきていた。
「――ミシュア」
「そろそろ執務のお時間です。お戻りになられては」
「すぐ行く」
フレデリカは立ち上がった。
ドレスの裾に、草切れがいくつもくっついてくる。
落とそうと手を伸ばし掛けると、ミシュアが「失礼します」と素早く手を伸ばした。一つ一つ丁寧に取り払う。
「また地面に直にお座りになって……お召物が汚れます」
「好きなのだ。許せ」
「世話係のサラザールが嘆きます」
騎士の苦言に苦笑しながら、フレデリカはされるがままに立っていた。
首だけを動かして、周囲の景色をまた眺める。
高台になっているこの場所は、どこまでも見渡せる、彼女のお気に入りの場所だった。
風が頬を撫でるのを感じながら眺めていると、遠くで動くいくつかの点に気づいた。
最初のコメントを投稿しよう!