一章

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      いつも探してしまうあの人。 昔の初で純粋な頃の感覚が蘇った。 ――あの頃の俺、恥ずかしかったや と思いつつ、今日もあの人を探す。 恥ずかしくても、身体がそうしてしまうから。 屋敷をぐるりと回って歩いたが、いない。 お決まりの美しくなった着物がゆらゆらと揺れているだけで、あの人の姿は無かった。 ――いつもならまだここにいるのに… 藤堂はその場に座り込み、考え始めた。 ――そう言えば最近、山崎んところに通ってるよな 鋭い嗅覚で、どこからでも情報を探り当てる。 ――なんで山崎なのさ 藤堂は立ち上がると迷わず山崎のところへ向かった。 その顔はどこか納得のいかない、むすっとした顔。
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