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朝から嫌な気だるさを感じながら、それでも過ぎていく時間を無視出来ずにのそっと起き上る。
シャツが軽く湿っていて気持ちが悪い。
カーテンを開けるのも面倒になり、そのまま部屋を後にした。
階段を下りていると鬱陶しい声が耳に入る。
「おっはよー」
僕はこいつが嫌いだ。
階下からこちらを見上げ満面の笑みを浮かべている。
罵声を浴びせたくなる衝動を奥歯を噛みしめて抑えた。
返事はしない。
そのままリビングへと続く廊下へと足を下ろし、妹の横を素通りする。
「おはようくらい返してよ」
その声、その声が本当に嫌いだ。
いかにも寂しいですって言わんばかりの甘えた声。
虫唾が走る。
なんで生きてるんだよ。
お前が世界中の人の代わりに死ねばいい。
「前は優しくしてくれたじゃん。学校で嫌なことがあった時なんか私に…」
「五月蠅いんだよっ!!」
怒りにまかせて妹の顔を叩く。
思い切り叩いたせいで妹の体が壁へと吸い寄せられるようにしてぶつかった。
血の気が引く。
叩くつもりなんてなかった。
ただこいつが…
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ぶたないで!ごめんなさい!」
早紀が頭を庇うように縮こまり、許しを乞う。訳の分からない感情が体の中を駆け巡る。
罪悪感なのか劣等感なのか悲壮感なのか。
早紀に抱いている感情が分からない。
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